深い造詣と畏怖が生む
精巧に造り上げられた自然の美
標高1000m。「シンクロする家の庭」は、前面道路から1mほど低くなった高低差のある場所につくられました。付近に自生するコナラ、アカマツ、ヤマザクラ、ツリバナに加え、高地に適したコメツガなどが植えられた心地よい庭は、周囲の風景にも美しく溶け込んで、人の手が生んだとは思えない自然な趣を醸しています。
実はこの庭、高低差のある南北の庭をなだらかにつなぎ、日照条件に応じて植生を変えながら、北から南に向かって徐々に広く、明るくなるよう緻密に計算されたもの。高低差の解消には、作為的に見えがちな土留めではなく自然の石と植栽を使うことで土の流下を防止。さらに地元でよく用いられる黒い浅間石ではなく色の明るい上田産の石を採用し、北の庭が暗い印象になるのを避けています。
自然再生士として人が営みをやめても自然に還る庭づくりを目指す菊池。「日当たりや樹種、土壌の特性はもちろん、目に見えない地中の微生物や水の浸透性、空気中の湿度、時間の経過にまで思いを巡らせて、自然の循環に一歩でも近づけたら」と話します。
住まいnet信州Vol.39より