project

エイチの家の庭

森に抱かれ
ひとつに響きあう
深奥なる庭の風景

 深い緑に包まれた、森の中の静かな別荘地。その一角に佇んでいるのがこのお宅です。庭に立つと、風は枝葉の間をそっと渡り、葉ずれの音があたりに響きます。建物の西側には手つかずの森が広がり、庭はその森の樹々と重なり合いながら、美しい風景を織りなしています。
 手がけたのは自然な庭づくりに定評のある28LABOの菊池さん。作庭にあたって何より心を尽くしたのが、建物の外的特徴である屋根付きテラスと庭をいかに美しく見せるかと、テラスからどのような風景を楽しめるようにするかでした。
 既存の木を残しつつ、新たに植えられたのは、コナラ、モミジ、カツラ、ダンコウバイ、アブラツツジなど、この地に古くから根づく在来種。それぞれの木が最もふさわしい場所を与えられ、森の記憶がそっと継がれていきました。アプローチには、信州産の鉄平石も敷かれました。
 建物と庭、庭と森ー。それらが境界を忘れ、重なり、一つの風景となった時、そこには昔からずっとそうであったかのような調和のとれた世界が現れました。それはこの庭が、大地に根ざし始めているという何よりの証なのでしょう。

住まいnet信州Vol.45より